【社説】東京15区(東京都江東区)衆議院議員補欠選挙が終わって

投票はおもに、東京都江東区内の区立小中学校で行われた。
投票当日はふだん入れない小中学校に入れる、貴重な機会でもある。



 全国から注目を浴びた東京15区の衆議院補欠選挙が終わった。投票率は40.70%。江東区のふだんの投票率は60%前後なので、かなり低い。投票日がゴールデンウィークだったのと、自民と公明の組織票を入れていた人たちが投票に行かなかったこともあるのかもしれない。
 投票の結果は以下の通り。 

福永かつや 1,410
乙武ひろただ 19,655
吉川りな 8,639
あきもと司 8,061
金澤ゆい 28,461
根本りょうすけ 1,110
酒井なつみ 49,476 当選
飯山あかり 24,264
須藤元気 29,669

政権与党の自民党は、これからどうするか

 今回の選挙は立憲民主党が公認した酒井候補が当選した。もっとも、衆議院が解散すれば、また近い将来選挙が行われる。
 なので今回の選挙は、衆議院の解散を見すえた予備選挙、そのように見ることもできる。
 おそらく政権与党の自民党は今回の選挙の結果を参考にして、解散後の総選挙ではまた違う戦略を練ってくると予想する。
 自民党は自民・公明の過半数割れを想定して、自民・公明・維新の連立を模索するかもしれない。この3党が連立すれば、過半数は維持できる。つまり政権与党を維持できる。この試算はすでに出ている。
 この試算にしたがって行動するならば、自民・公明両党は、次の東京15区総選挙では維新の金澤氏を推薦する可能性もある。もし自民公明の組織票が金澤氏に流れれば、立憲民主党の酒井氏はおそらく勝ち目はない。
 世間では自民党政権がいつ解散するのか興味を持って見つめている。おそらく自民党は時間を稼いで、自民・公明・維新の連立を模索するのではないだろうか。そして連立の話がついたところで、衆議院を解散するのではないだろうか。

今回の選挙の台風の目 飯山あかり氏はこれからどうするか

 今回の選挙で台風の目となったのは、本誌は飯山あかり氏だと考える。飯山氏は江東区では全く無名ながら、維新の金澤氏にせまる得票を獲得した。江東区の自民支持層、および無党派層が一定程度、飯山氏に流れたものとみられている。
 飯山氏の特徴は、インターネット上では熱烈に支持されていることだ。
 インターネット上だけで見れば、圧倒的に飯山氏を支持する人は多い。どの候補者よりも。見ていて気味が悪く思うほどだ。
 これはネット上の工作ももちろんあるのだろうが、江東区に限らず、全国的に飯山氏が支持され、有名になっているからだと考える。
 飯山氏を擁立した日本保守党はこの選挙に、とても手応えを感じたであろう。江東区外でも支持者が多ければ、衆議院議員選挙ではたとえ選挙区で落選しても、比例代表で復活当選することも可能だからだ。
 なので飯山氏は次回の解散総選挙でも、おそらく立候補する可能性がある。立候補する場合はまず間違いなく、選挙区と比例で重複立候補するだろう。
 問題は飯山氏が、どの選挙区で立候補するかだ。
 飯山氏がふたたび東京15区に立候補するとは考えづらい。そうなったら困るのは自民公明維新の連立を模索している3党だからだ。金澤氏の票と完全に割れてしまい、立憲民主党の酒井氏が漁夫の利を得て当選してしまうかもしれない。それを防ぐためにおそらく自民党は日本保守党に「飯山さんは東京15区から出て行ってくれないか」とお願いするのではないだろうか。
 飯山氏は比例代表で復活当選をするために、惜敗率を稼ぎやすい選挙区を探すことになるだろう。それは東京15区以外かもしれないし、東京15区かもしれない。
 当選する可能性がより高いのは、衆議院選挙ではなく参議院選挙で立候補することだ。参議院で立候補すれば、全国から比例代表の得票を得ることができるからだ。ネット支持者の多い飯山氏にとっては、そっちのほうが有利だ。
 日本保守党は今後、衆議院だろうが参議院だろうが、選挙があるごとに飯山氏を立候補させるのではないだろうか。そうすれば知名度も上がるし、そうなると比例代表の得票で、いずれは当選することができる。
 インターネット上の書き込みが、それを物語っている。ネットの書き込みで多かったもののひとつに、なぜ江東区民は選挙に行かないのだ、という批判があった。その批判をしている人の大多数は飯山あかり氏を支持している人だった。つまり江東区外では、飯山氏に投票したい人がごまんといたのだ。
 日本保守党はその江東区外の支持層の票を取り込むために、これから戦略を練って飯山氏を立候補させることになるだろう。